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「こういう風な状態だったのですね。虎さんは穴の中にいて,上へあがれない。そしてとおりかかった旅人さんに、救いあげてくれと頼んだ。なるほど、では裁判しますよ。一体この争いは、旅人さんが虎さんを穴からだしてやったためにおこったのだ。つまりなまじなさけをかけたのが争いの種で、はじめのとおりこのままにさえしておいたら、別に苦情はおこらなかったのだ。だから旅人さんは虎さんにかまわず、さっさとこのままお出でになったほうが好いでしょう。これがまず私の公平な裁判です。ではさようなら。」
と言って狐は、さっさと向こうへ行ってしまいました。思いがけない狐の裁判に、大よろこびしたのは旅人でした。
「どうもありがとうございました。」
と,礼を言って、自分も後から立ち去ろうとしました。
虎は事の意外にびっくりしました。そしてもう一度大声をあげて、旅人に救いをもとめましたが、もう二度と旅人は虎のいうことをきかず、どこともなく立ち去ってしまいました。
(口碑―秦学文氏『朝鮮民話集』渋沢青花著 社会思想者刊(現代教養文庫)
「文中 “棒をおろし、棒を引き上げるフレーズは、参照者加筆」。
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